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身体障害の人は川崎でどう暮らしているの?……気になる姉の将来 |
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私には身体障害者の姉がいます。
私がいつも思っていることは、障害者の親と兄弟では、考えていることが少し違うと思います。もちろんたいせつなぞくにはかわりありませんが。
というのは、親は障害者の子どもは自分が看取りたいと考えていますが、私からすると70歳くらいの親が成人した子供の介護するというのは心配でなりません。親は兄弟の負担をなるべく軽くしたいと考えてのことだと思う反面子離れできないとも言えると思います。
自立にむかえる環境を
障害の重さ、症状によってできることは全く変わってきますが、家族はその出来る出来ないをかわいそうだからといった気持を捨てて、出来るだけ自立に向かえる環境を作らなければまりません。
「つい、やってあげる」を繰り返すと本人にとってそれは自分にはできないことになってしまいます。健常者が1分で90%出来ることが障害者には1年で10%しか出来ないことがたくさんあると思います。しかしいつ我々は死ぬかわかりません本人だけが残される可能性はあります。だから家族は最悪の状態も考えて、その10%を作る意識を本人に持たせてあげることが大切だと私は思います。
出来るだけ本人の出来る引き出しを作ってあげなければなりません。
グループホームやショートステイ
しかし身障者のグループホームだったり、ショートステイの施設は川崎市にどのくらいあるのでしょうか?こういった施設は本人のためはもちろん、子離れ、介護者のストレス発散に役立ちます。川崎市の現状を教えて下さい。
<次号から、川崎市での身体障害のある人の暮らしの実情や、他の市でのとりくみなどもおしらせしていきます。皆さんのご意見もぜひお願いします>
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区役所の保健福祉センターで、こども支援室という看板が目に留まりました。障害のある子どもにも、かかわりがあるのでしょうか。
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川崎市は、この四月に子どもたちの相談支援の場として、各区役所に「こども支援室」というのを設けました。どんなところなのか、こども支援室に伺ってみました。
こども支援室は、こども支援室長と、地域こども支援担当・保育所連携担当・保健福祉連携担当に教育担当で構成され、総合的に子どもたちへの支援をするところです。保健・福祉と教育関係者が、机を並べて連携しながら、ゼロ歳から18歳までのこどもに関する市民の幅広いニーズに応えるためにつくられました。電話や窓口で相談を聞いてもらえますが、その場ですぐ解決できないようなことは、支援室の中で担当者が集まって、どんな支援が必要なのかを検討され対応していくそうです。より専門的な対応が必要な場合は、ここから児童相談所や療育センターにつなげていくことになります。子どもの権利が侵されているような場合は、直接オンブズパーソンを紹介することもあるということでした。
すでに、障害者手帳を持っていて、受けたい支援がはっきりしている方は、今まで通り保健福祉センターの障害担当が関わります。たとえば「子どもが学校に行きたがらないのだけど」といったような、個別の悩み相談はこちらで聞いてもらうことができます。
昨年、「豊かな地域療育を考える会」でおこなった相談支援の実態把握のアンケート調査では、67%の人に相談希望がありながら、実際には「相談する場がない」、「どこに行ったらいいのかわからない」という声が多く出されていました。本当は学校の先生や相談機関に相談したいのに、実際には知人や友人に聞いてすましている方が多いこともよくわかりました。そんな家族の思いを受け止めてくれる場ができたということだと思います。
一言で子育ての悩みといっても、お子さんに育てにくさがあるのか、家族の関わり方の問題であるのか、経済的なことも含めた家庭に心配事があるためなのか、保育所や学校の問題なのか、ひとりで考えていても迷うばかりですよね。そんなとき、気軽に「こまっているんだけど」とかけ込める場がこの支援室ではないかと思いました。支援室長さんは、子どもの幸せを守るというところでの使いやすい相談窓口として、ぜひ利用してくださいといっておられます。
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通院や外出などで気軽に利用できる移送サービスはないでしょうか?
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ロンドに寄せられる相談の多くに、車両を利用した移送サービスの問い合わせがあります。
現在の移送サービスとしては「川崎市福祉キャブ」「福祉有償運送許可団体」と民間タクシー会社の利用になります。
またその他にも、高津、中原の社会福祉協議会などボランティア的に行っている移送団体があります。移送サービスはそれぞれの事業所によって料金やシステムが異なりますので、確認が必要になります。
“いつでもすぐ使える”状態は難しい状態だと思いますが、出来るだけ多くの事業所を探すことが必要だと思います。
また、療育手帳の方でも利用できる場合や団体もありますので相談してみてください。
今回は福祉キャブと高津区社会福祉協議会を例にとってシステムをご紹介します。
【川崎市福祉キャブ】ご利用案内(川崎市内在住者に限ります) |
利用できる方 |
(1) |
外出時に車椅子を利用している方 |
(2) |
全身性障害等のため、移動にストレッチャーが必要な方 |
(3) |
その他の重度障害により、外出する時介護が必要で、福祉キャブの利用が適当と思われる方 |
(4) |
内部に障害を持ち、通院のためにご利用される方 |
(5) |
(1)〜(4)に該当し、利用登録された方 |
登録先 |
財団法人川崎市身体障害者協会
TEL044(246)6941 FAX044(246)6943 |
利用方法 |
利用希望日の1か月前から前日までに上記に申し込みをしてください。 |
料金 |
1時間以内400円
以後、1時間を超える毎に400円
駐車料金・有料道路は実費をいただきます。 |
お願い |
(1) |
ご利用のときは利用者登録を運転手に提示してください。 |
(2) |
介助を必要とする利用者は必ず介助者をおつけください。 |
(3) |
車両の故障等予測できない理由で、運転が不可能になった場合の損害補償はいたしかねます。 |
【高津区社会福祉協議会】 |
利用目的 |
1.医療機関への通院
2.余暇活動への参加
3.その他社会参加 |
利用方法
及び利用料 |
ご利用はあらかじめ高津区社会福祉協議会移送サービス事業の会員として登録(無料)が必要です。利用料は不要ですが実費として燃料代をいただきます。その他必要経費(高速料金・駐車場代等)は利用者負担となります。 |
利用対象 |
区内在住で車椅子利用の方・歩行困難な方で、公共交通機関や一般車両の利用が困難で登録した方
原則として身障2級以上、要介護2以上の方
※原則として必ず付き添いの方をつけていただきます。 |
利用者負担 |
レッツ号:40円/km
ミニレッツ:20円/km
※ガソリン価格により変動します。 |
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川崎市に発達相談支援センターができたそうですね。どんなところなのでしょうか。
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川崎市発達相談支援センターとは、「発達障害者自立支援法」に基づいて配置される相談機関のことです。川崎市には、今まで、発達障害全般に専門的に対応する相談機関がありませんでした。ケースワーカー、医師、臨床心理士がいます。
ケースワーカーの武居光さんにお話を伺いました。
《開所から約三カ月で、相談件数は70件ほど(3月12日時点)。子どもだけではなく、成人の方の相談にも乗っています。
もちろん、自分の話や悩みを聞いて欲しい、というお母さんもいます。多くの相談機関では、子どもについての支援が中心で、お母さんの話をていねいに聞いてもらえなかったりしますよね。
また、センターでは、学校の先生や支援者からの相談も受けつけています。支援者の人も、何ができるのかわからない、と悩む場合が多いでしょう。その場合は子どもの名前を伏せての相談でも大丈夫です。
ただ、センターとしては、できるだけ、本人とご家族に直接お会いする機会を作って、いっしょに考えていきたい、と考えています。本人の「問題行動」に必ずしもとらわれず、生活全般をトータルにうけとめながら相談にのっていきたいですね。「障害」だけで見てしまうと、その人のありのままの姿が見えなくなってしまいますよね。本当は、人と人との関係の中で、「障害」という概念自体が溶けてしまえばいい、と思っています。実際の親子は、いちいちこの子は障害者、なんて思わないで暮らしているのではないでしょうか。そういう世の中になるように、橋渡ししていければ、と思います。》
武居さんのお話は、「相談とは何か」の核心に迫るものがありました。きっと相談とは、ただ使える制度やサービスを紹介して終わり、というものではありません。人と人との「出会い」の場であり、お互いの関係をあたためていける場ではないでしょうか。そのためには、支援者同士がちゃんと話し合える環境も不可欠だと思います。「いつでもまた戻ってきていいよ。また一緒に考えましょう」という信頼がひろがっていけばいい、と思います。もちろん、専門機関だけが頑張るのではなくて、行政も学校も支援者も当事者も家族も、お互いに関係を積み重ねていくことが必要になりそうです。最近は相談する側にも、「使えるもの」を求めて相談先・支援先を転々とし、即座に答えを求める方が目立つように思います。「相談」を身近なものとして、敷居を下げていければ。そういう意味での出会いを重ねていきましょう。
川崎市発達相談支援センター
川崎区砂子1−7−5 タケシゲビル3F
TEL 044−223−3304
FAX 044−200−0206
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一年ほどS病院に入院していた息子が、退院することになりました。気管切開をしカニューレをつけたので、呼吸は楽そうです。でも、家に帰ってからのケアを考えると、下に弟妹もいるので、私ひとりでできるかとても心配です。ヘルパーさんにも吸引とか頼んでいいのでしょうか。
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厚生労働省は、たんの吸引を実施できる前提として、
・医療機関との連絡が取れていること
・定期的に通院したり訪問看護師さんの定期的な訪問があり、ご本人の状態を医療機関が把握されていること
・緊急時の対応等の確認が、医療機関と取れていること
等をあげています。その上で、ヘルパーが研修や実技指導を受け、本人・家族の同意書をかわすことが必要となります。
退院される前に、家庭に戻ったらどんな支援をしてほしいか、主治医と学校や地域の訪問看護師さん、ヘルパー事業所との連携を作っておくことが必要ですね。S病院なら、医療相談部のケースワーカーさんが、相談に乗って下さると思います。関係者が集まったケア会議の開催をお願いしてみましょう。居宅介護のヘルパー派遣の申請も改めて必要となるので、保健福祉センターのケースワーカーさんも参加してもらうといいですね。
ヘルパーによる吸引が必要なことをこのケア会議で確認してもらい、主治医の先生からヘルパー事業所への依頼書のようなものをいただいておくといいと思います。
今まで利用さてていたヘルパー事業所にも、ヘルパーによる痰の吸引が可能か、聞いておかれた方がいいでしょう。ヘルパーなら誰でもすぐにできるものではありません。お母さんも、信頼できるヘルパーでなければ頼めませんよね。
ヘルパーは、事前に痰の吸引研修を受けていることが、まずは必要です。その上で、実際にお子さんの吸引ができるかどうかを主治医か訪問看護師さんに診てもらいます。大丈夫となったら、家族とそのヘルパーとで同意書を交わし実施となります。
なんだか大変そうに見えますが、医療関係者と家庭で介護するものとが、つながっていることが一番大切です。次に続く人のためにも、理解者をふやしていきましょう。
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重い障害の中学生にになる娘がいます。体重は20キロありませんが、チューブ栄養が必要で吸引も頻繁にあり、常に介護が必要です。私自身、重度の腰痛のため本人を抱いて移動するのはベッドと車いすの間だけが、精一杯です。今まで訪問看護師さんに週1〜2回、ヘルパーさんに1回きてもらって入浴介助をお願いしてきました。ところが、更新手続きに行ったところ、18歳以下の児童は身体介護の支給条件として、本人の体重が40キロ以上ないとだめだと言われました。担当のワーカーさんに事情をお話したところ、「本庁協議」になるといわれました。私も呼ばれていろいろ聞かれるのでしょうか?
Q1.体重40キロという基準はどうやって決まったのでしょうか?20キロでも私に抱きつくことができない娘は、大変重たいです。呼吸状態も悪いので、常に抱く姿勢に気を配らなくてはならず、とても私ではお風呂に入れることはできません。
Q2.「本庁協議とは、どんなことをするのでしょうか。私が行かれないときは、どなたか状況を見に来たり話を聞きに来て下さるのでしょうか。
Q3.支給決定を断られたら、どうしたらいいのでしょうか。
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A1.川崎市には障害程度区分を認定する審査会が設置されていますが、そのうち市全体を統括する合議体でけんとうされた基準です。構成メンバーは、大学の先生、医師、当事者団体の代表の方々です。障害児の身体介護の対象者の基準としては、このぐらいが妥当ということでした。
A2.「本庁協議」とは、福祉事務所だけでは判断できない場合に、障害福祉課でより詳しく支援の必要性を検討するための手続きです。担当のワーカーが状況を細かく聞き取って作成した文書をもとに障害福祉課の中でサービスの対象とするか、またどの程度の支給量とするかを話し合います。お母さんが直接市役所にいらっしゃる必要はありません。
A3.「本庁協議」は、個々の状況に応じて柔軟に対応しなければならないと認められるかを判断するために行っていますので、個別に協議の結果については、理由を付けて福祉事務所に回答されることになっています。その内容に納得がいかないときは、審査会の市の合議体での再検討を求めることができます。
また、市の合議体での検討結果にも不服がある場合には、神奈川県が設置する不服審査会に審査請求することができますし、その結果にも納得できない場合には、川崎市に対して訴訟を起こすこともできますが、結論が出るまでかなりの時間と手続きを要しますので、協議の段階でできる限りさまざまな事情に配慮するよう努めています。
(川崎市障害福祉課 竹田さんより回答いただきました。)
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「障害者の権利条約」って、何ですか。そもそも、わたしたちの生活に関係があるんですか。
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「障害者の権利条約」は、21世紀初の国際的な人権条約です。2006年12月13日、国連の総会で採択されました。文面の作成には、政府機関のみならず、多くの障害当事者の非政府機関(NGO)が参加し、5年以上かけて作られてきました。
ポイントは、障害当事者の立場から、障害者の基本的な「人権」を、明確に書き込んだことにあります。多くの障害者に関する法律は、医療や福祉の視点から作成され、当事者の人権を十分に考慮したものとはいえません。特に日本では、財源や政策状況次第で「ないがしろにされても仕方ないもの、我慢するしかないもの」と思われがちです。当事者や家族ですら、そう思い込んで=思わされている。しかし、人権とは本来、財政や政治がどう変わろうとも、その人がどんな人であろうとも、「最低限守られるべき」基本的な権利を指します。
日本政府は、2007年9月28日に「署名」はしましたが、「批准」はしていません。署名とは、将来条約を批准する意思がある、と表明すること。批准とは、条約を正式に受け入れることです。批准した場合、その国は、具体的に国内法の整備を行うことになります。その場合、現在の日本の国内法と抵触する部分が、かなりあると思われます。たとえば通園や通学に親の付き添いを強制する、障害のために病院から治療や入院を拒否される、バスや電車のアクセスに不便がある、などは、人権上あってはならないことです。しかし、それが暗黙の前提(仕方ないこと)とされていませんか。
また障害者の権利条約は、障害を「医学モデル」ではなく「社会モデル」で考えます。本人の機能の治療・リハビリを過度に絶対化せず、障害を本人と社会環境の関係から作られるものと考えた上で、社会環境の整備を重視するモデルです。条約はさらに、抽象的な「平等」のお題目で済ませず、社会の側の個々の障害者への「合理的な配慮」のもとに、障害者が実質的な平等を与えられることを求めます。障害者を特別扱いしなさい、ではなく、障害ゆえに本人や家族が不平等な生活を強いられること、合理的配慮がなされないことを、「差別」と考えるのです。
はっきりいって、私たちの多くは「人権」という言葉を信用していません。しかしそれは、歴史の中でこつこつと、地道に蓄積されてきたものです。基本に立ち戻って、考えてみてもよいのではないでしょうか。
(以上、東俊裕監修/DPI日本会議編集『障害者の権利条約でこう変わる』(解放出版社、2007年12月)を参照しました)
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